郎と手を分ったのは、それから大分経ってからであった。
お庄は大木戸から俥をやとって、荒木町の方へ急がせた。二度と帰って来るような気がしていなかった。
七十四
荒木町の家では、従姉《あね》が相変らず色沢《いろつや》の悪い顔をして、ランプの薄暗い茶の間に坐っていた。いつも気が浮き浮きしたということもない従姉《あね》の、髪一つ綺麗に結った姿をお庄は見たことがなかった。
「またどうかしたんですか。」と、お庄は気遣わしげに訊《き》いた。
「いいえ。相変らずぶらぶらしているもんですからね。」と、従姉《あね》はぽきぽきしたお庄の顔を眺めた。行った時から見ると、どこかお茶屋風になっているのも目についた。
浅山は、このごろしばらく帰朝している姉婿の家へ行っていて、留守であったが、台所にいた伯母は、手を拭きながらすぐに傍へ寄って来た。
「お前もそうしていいところへ片着いて、どんなに幸福《しあわせ》だか知れやしないわね。」と、お饒舌《しゃべり》の伯母は独りでお庄の身の上をうらやましがった。浅山の月給が細いのに、娘が始終寝たり起きたりしているので、長いあいだ胃が持病の自分が、六十|幾歳《い
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