で口走った。これまでにも、酔って正体がなくなると、芳太郎は、時々そうした口吻《くちぶり》を洩らした。
お庄は暗い窓の外を眺めながら、顔に笑っていた。
新宿まで来た時、お庄はとうとう一緒に降りることにした。そうでもしなければ、男を撒《ま》くことが出来ないと考えた。
停車場を出ると、二人は並んで暗い片側町を歩いていた。芳太郎は時々|気狂《きちがい》の発作のように、お庄の手を引っ張って、明りの差さない草ッ原に連れ出した。足場の悪い草叢《くさむら》にはところどころに水溜りが、ちらちらと空明りに黒く光った。お庄はけたたましい声を立てながら、芳太郎の手に掴まってそこを渉《わた》った。四方《あたり》はシンとしていた。
広い通りへ出ると、両側の妓楼《ぎろう》の二階や三階に薄暗い瓦斯燈《ガスとう》が点《とも》れて、人影がちらほら見えた。水浅黄色の暖簾《のれん》のかかった家の入口からは、周《まわ》りに色硝子の障子の嵌《はま》った中庭や、つるつるした古い光沢《つや》のある廊下段階子などが見透《みすか》された。芳太郎は時々そこらの門口に立ち停った。
「今夜中に、私きっと帰ってよ。」と、お庄がやっと芳太
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