いる。二人はこのごろ、ろくろく話をするような折もなかった。芳太郎は昼間も酒の気を絶やさず、夜はまたふらふらとそこらをほつき廻り、友達と一緒に宿場を騒《ぞめ》き歩いた。
お庄は時々お袋からいいつかって、心の荒びたような男の機嫌をも取らなければならなかった。
座敷の閑《ひま》な時は、お庄も寄りついて来る芳太郎と一緒にたまには打ち釈《と》けた話をすることもあった。隠し立てのない芳太郎の口から、お袋や親父の噂を聞き出すのも興味があったし、芳太郎の関係した女のことを知るのも面白かった。
「お前が出て行けア、己だって家にアいねえ。」と、芳太郎は駄々《だだ》ッ児《こ》のように言い出した。
そんなところを見つけると、お袋はすぐに厭な顔をした。
「ふざけていちゃいけないよ。」と、お袋は呶鳴《どな》りつけて、お庄に用事をいいつけた。
酒で頭脳《あたま》の爛《ただ》れたようになっている芳太郎は、汽車のなかでも、始終いらいらしていた。そして時々独り語《ごと》のような棄て鉢を言った。金を掻《か》っ浚《さら》って家を逃げ出してくれるとか、お袋を撲《なぐ》り殺して高飛びをするとか、そんなことをすらお庄の耳元
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