は後から追いかけて来た。
「四ツ谷の従姉《ねえ》さんのとこまで行って来ますの。」と、お庄は振り顧りながら言った。
「何しに行くんだい。」芳太郎は釈《と》けかかった太い白縮緬《しろちりめん》の兵児帯《へこおび》をぐるぐる捲《ま》きつけながら、「お前今夜は帰りゃしないんだろう。己も一緒に行こう。」
「人に嗤《わら》われますよ。」と、お庄は後歯《あとば》の下駄を鳴らしながら、停車場へ入って行った。
お庄が切符を買うと、芳太郎も鰐口《がまぐち》から金を出して同じように四ツ谷行きを買った。
「一緒に行ったり何かして、後で叱《しか》られてもいいんですか。」お庄は念を押しながら埒《らち》の外へ出て行った。
お庄は内密《ないしょ》で、従姉《あね》にいろいろ話したいこともあった。この前にもちょっと従姉《あね》の耳へ入れておいた家の様子や自分の立場について、媒介人《なこうど》の利いた口と大した相違のあることを、今一度委しく話して見たかった。
「いいんだよ。」と、芳太郎は耳に挟んでいた両切りの莨に火を点《つ》けて吸いながら、お庄の傍を離れなかった。帽子も冠《かぶ》らない顔が蒼白く、目の色も澱《おど》んで
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