いちゃ空罎屋へ売るんですがね、どうして大きいものですよ。お前はそのお鳥目《あし》を自分のものにして除《の》けておおきよ。これまでは芳の儲《もう》けにしておいたけれど、彼《あれ》にやったって皆な飲んでしまうから何にもなりゃしない。」と言って、薄暗い物置の中を窺《のぞ》いていた。
 お袋は、これまでに骨折って、幼《ちいさ》い芳太郎を育てて来ても、芳太郎の頭脳《あたま》にはまだ田舎にいる母親のことが、時々憶い出されているということや、今の親父と折合いの悪いことなどを言い出して零《こぼ》した。お袋の口ではこの界隈で顔利きの親父が、帳場にでも坐っていてくれなければ、一日もこんな商売がして行かれないということであった。
「それでお前さえ柔順《おとな》しく辛抱してくれれば、私は何でもして上げるよ。芳太郎が厭なら厭でもいいのさ。彼《あれ》に身上を配《わ》けて別家さして、お前に他から養子をしたっていいんですからね。」
 お庄は空罎の積みの前に立って、「え、え。」と言って聴いていたが、ぽつぽつ痘痕《あばた》のような穴のあるお袋の顔が、薄気味わるく眺められた。四、五日前に、親父がどこからか、延べの指環を一つ
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