へ出して言うこともあった。
「こんな客商売をする家へ来たら、お前もちっと気を利かさなくちゃいけないよ。」
お庄はお袋の指図で、浅草にいたころ挿したような黄楊《つげ》の櫛《くし》などを、前髪を広く取った島田髷の頭髪《あたま》に挿さされた。そして手の足りない時は、座敷へ出て客の相手をもしなければならなかった。
「あんたはここの家の何です。」と言って客に訊《き》かれると、お庄はいつも曖昧《あいまい》な返事をして笑っているのが切なかった。お袋に教わった通りに、ここの養女だということが、慣れて来るまでは口へ出なかった。
親父もお袋も、血を引いていない子息《むすこ》の芳太郎のことをあまり気にかけてもいなかった。芳太郎の生みの母親が、いつかどこからか帰って来はしないかということも、始終|気遣《きづか》われた。この家を芳太郎に譲れば、自分たちはやがてここから逐い出されて行かなければならぬようなことがないとも限らぬと不安のある様子も、お庄の心に感じられて来た。
お袋は土間へ降りてビールや正宗の空罎《あきびん》を、物置へしまい込んでいるお庄の側へ来て、
「こんな物は皆なお前にあげるよ。三月も溜めてお
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