んで、そこへ鏡台を持って来てもらって、顔を直したり、衣紋を繕ったりしている間に、媒介人《なこうど》は二度も三度も、店の方へ呼ばれて行った。
「困ったな。」と、媒介人《なこうど》は部屋へ復《かえ》ってくると、入口でそっと浅山に耳打ちをした。一行が乗り込んで来る二、三時間前に、ぶらりと店頭《みせさき》から出て行ったきり、子息《むすこ》の姿が見えないと言うのであった。
「どうしたというんだ。肝腎のお婿さんの行方が知れないなぞは少しおかしいね。」とチョッキの間ぬけて衿の濶《ひろ》いフロックを着けて坐り込んでいた浅山は、興のさめたような顔をして、薄い口髭《くちひげ》を捻《ひね》っていた。
 頭の地の透き透きになった、色の黒い大柄の媒介人《なこうど》は、落着きのない顔を顰《しか》めてまた母屋《もや》の方へ渡って行った。
 二十二になる新婿《にいむこ》が、床前《とこまえ》に伏目がちに坐っている嫁の側へ押し据えられたのは大分経ってからであった。お庄はその顔を見ることすら出来なかったが、べろべろに酔っていることだけは、媒介人《なこうど》に引っ張られて入って来た時の様子でも解った。並みはずれに身長《たけ》
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