《しま》の羽織に尻端折《しりはしょ》りをして、靴をはいた男などがいた。中には羽織袴《はおりはかま》の人もあった。
「どうも御苦労さまで……。」という挨拶が、双方から取り交された。
 その家は停車場から五、六町も隔たった通りにあった。暗い町中にはところどころに人立ちがしていた。広い空地に集《つど》うている子守の哀れな声で謳《うた》う唄《うた》の節が、胸に染みるようであった。お庄らの入って行ったところは、近ごろの普請と思われる扉《とびら》のある新しい門口で、そこを潜《くぐ》ると、木立ちを切り拓《ひら》いて作ったような、まだ落着きのない山ばかりの庭を通って、橋廊下で繋《つな》がれた一棟の建物の座敷の縁側へ出るように、飛び石が置いてあった。池の縁には松の葉蔭に燈籠《とうろう》の灯が見えなどした。
 お庄らの上って行った部屋は、六畳ばかりの小間《こま》であった。浅山も媒介人《なこうど》も、インバネスを脱ぎ棄て、縁側から上って行くと、やがていろいろの人がそこへ顔を出した。老人《としより》夫婦もちょっと来て挨拶をして行った。
 店の方で、何やらごたごたしている様子が、こっちへも解った。お庄が女中に頼
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