て奥で臥《ふ》せっていた。
 むかし品川で芸者をしていたとかいうその母親は、体の小肥《ぶと》りに肥った、目容《めつき》に愛嬌《あいきょう》のある鼻の低い婆さんであった。半衿のかかった軟かい着物のうえに、小紋の羽織などを抜き衣紋《えもん》にして、浅山が差してくれる猪口を両手に受けなどして、お庄にもお愛想を言っていた。
 お庄も酒の酌をしながら、この婆さんの気質を知ろうとして、時々顔色を見ていた。
「家は別にむずかしいことはございません。お爺さんはもうごく気のいい人ですし、私もこれっきりの人間なのですから、ただ子息《むすこ》のお守りをしてもらいさえすればそれでいいのです。」と、母親は帰りがけに、ずっと打ち釈《と》けたような調子で、猪口を浅山にさしながら言った。
 少年のような顔をした浅山は、ぐずりぐずりした調子で、媒介人《なこうど》とこの婆さんとを相手に、ちびちびいつまでも後を引いていた。そして時々お庄の失笑《ふきだ》すような笑談口《じょうだんぐち》を利いた。お庄は奥の方へ逃げ込んで行った。
 母親の話では、嫁がうまく落ち着いてくれて、銭遣いの荒い子息《むすこ》がそれで締ってくれさえすれば
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