ったが、土地の客も少くなかった。中野の方の電信隊へ勤める将校連も、時々来ては騒いだ。
四ツ谷に縁づいている父方の従姉《あね》の家へ出入りしている男が、その家をよく知っていたところから、大蔵省へ出ている従姉《あね》の良人と叔父との間にそんな話が纏まることになった。
それまでに、お庄は二度も三度も四ツ谷の従姉《あね》の家へ遊びにやらされた。従姉《あね》の家とは長いあいだ打ち絶えていた。互に居所も知らずにいたのが、この三月ごろ田舎から出て来た人の口から、ふとその消息を聴くことが出来た。古いころの早稲田を出たというその良人の浅山は、ある会社の外国支店長をしている自分の姉の添合《つれあ》いの家宅《やしき》の門内にある小さい家に住まっていた。家には、幼い時に二度逢ったきりで、顔も覚えていない従姉《あね》の母親も一緒にいた。
媒介人《なこうど》はそこでお庄を見てから、思いついて双方へ口を利くことになった。
先方の家の母親だという、四十四、五の女が、媒介人《なこうど》と一緒にお庄を見に来たとき、お庄は浅山の晩酌の世話をしていた。下《しも》の病気で始終悩まされていた従姉《あね》は、頭が痛むと言っ
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