た。纏《まと》まって何一つ|躾《しつ》けられたことのない体で、そんな母子のなかへ入って、日が暮せそうにも思えなかった。
 その子息《むすこ》が、遊びに来ている時、お庄は迎えを受けて、湯島の伯母に連れられてしょうことなしに出て行った。
「あらたまった姿《なり》をして行くには及ばんで、羽織でも一枚上へ引っ被《か》けて……。」と、母親と二人、支度でごたごたしている奥の方へ伯母が声をかけた。
 子息《むすこ》は茶の室《ま》の火鉢のところに坐って、老母《としより》と茶を呑んでいた。撫《な》で肩の男の後姿が、上り口の障子の腰硝子から覗くお庄の目についた。同時に振り顧った男ののっぺりした色白の細面《ほそおもて》も、ちらと目に入った。
 裏口の方へ廻されたが、お庄はそこからも入り得ずにやがて逃げて帰った。

     六十八

 春の末に郊外のある町へ片づいて行くまで、お庄は家にぶらぶらしていた。
 その町は飯田町《いいだまち》から汽車で行って、一時間ばかりの道程《みちのり》であった。家は古い料理屋で、東京から西新井《にしあらい》の薬師やお祖師様へ参詣《さんけい》する人たちの立ち寄って飲食する場所であ
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