この家へ、糺や繁三と一緒に、正月カルタを取りに行った時、女はしみじみした調子でお庄に縁談を勧めた。
「どこか堅いところへ速くお片着きなさい。やっぱり商売屋がいいんですよ。商いは何といっても強《つよ》ござんすからね。」
女は父親の死ぬ間際に、質に入っている着物が出せなくて、見舞いに来ることも出来ずにいた時の切なかったことなどを、また新しく語りだした。昼間うるさく借金取りに襲われる画家は、夜戸締りをしてから、やっと落ち着いて画板に向うことが出来た。幾晩もかかってその絵が出来揚ってから、久しぶりでようやく父親を見舞ったころには、病勢がもうよほど進んでいた。女の体は、それきり実家に押えられてしまった。
眼鏡屋の話は、その晩も母子の口から言い出された。そこはかなりに古い店で、財産と言うほどのものもないけれど、子息《むすこ》は小さい時から大事にして育ててあったから、世間摺れのしているようなこともないし、母親は少しは芸事なども出来て、気爽《きさく》な女だから、そんなに窮屈な家ではなかろうということであった。
磯野との関係を深くも知らないこの母子の前で、お庄は応答《うけこたえ》のしようもなかっ
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