さ》を持ち出して、つい近所のお増の宿の前まで様子を見に行った。
お増の宿は、その番地の差配をしている家の奥の方の離房《はなれ》で、黒板塀《くろいたべい》の切り戸を押すと、狭い庭からその縁側へ上るようになっている。お庄はその切り戸の節穴から、そっと裏を覗《のぞ》いてみると、離房《はなれ》の方の板戸は、ぴったり締っていて、中に人気《ひとけ》もしなかった。お庄は急いで天神の通りの方へ出て行った。
磯野の叔父の家では、やっと飯を済ましたところであった。叔父は茶の室《ま》の火鉢のところに胡坐《あぐら》を組んで、眼鏡をかけて新聞を見ていた。
お庄は上《あが》り框《がまち》のところに膝を突いて、奥の方を覗き込んだが、磯野は三時ごろにぶらりと出て行ったきり、まだ帰っていなかった。
「私アまた庄ちゃんのとこだと思ったら、そいつアおかしいね。」叔父はそう言いながら、また新聞に目を移した。
寄席へ入って行くと、目をきょろきょろさせながら、四下《あたり》を見廻しているお庄のすぐ目の前に、磯野とお増が狎《な》れ狎《な》れしげに肩を並べて坐っていた。
六十三
お庄はその側《なか》へ割り込ん
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