伝染《うつ》るといいますよ。お女郎にゃ随分あるんですって。」
酒や女に耽《ふけ》っていた弟のだらしのない生活が、母親の胸に想《おも》い回《かえ》された。
「あれで臥《ね》つきでもしたらどうするだか。」
「いいですよ。叔父さんだって可哀そうじゃありませんか。私きっと叔父さんを見達《みとど》けてあげますよ。」お照は痩せこけた手で、豆ランプに火を点《つ》けると、やがてずるずるした風をして、段梯子を上って行った。
「田舎へ帰れアあれでもちゃんとした家の娘でいられるに。」母親は後で呟いた。
自棄《やけ》になったようなこの女の心持が、母親には呑み込めなかった。
五十九
島田髷《しまだまげ》に平打《ひらうち》をさして、こてこて白粉や紅を塗って、瘟気《いきれ》のする人込みのなかを歩いているお庄の猥《みだ》らなような顔が、明るいところへ出ると、羞《はじ》らわしげに赧《あか》らんだ。薬師裏を脱けた広場には、もう夏菊の株などが拡げられてあった。
帰りに暗い路次のなかの家へ入って、衝立《ついたて》の蔭で一緒に麦とろなどを喰べた。酒も取って飲んだ。そこを出たとき、お庄は紅い顔をしていた。
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