すね。」
「まアそういった順ですかね。」
葬儀社が来たとか言って、丸山は奥へ呼び込まれて行った。
叔父はぼんやりしたような顔をして、時々そこいらへ姿を現わした。
「電報はもう届いていますらね。」と叔母の母親も、田舎の伜《せがれ》夫婦の出て来るか来ぬかを気にしては、訊いていた。
この晩、お庄は経を読んでいる法師《ぼうず》の傍へ来て坐る隙《ひま》もなかった。座敷の方が散らかって来ると、丸山の内儀《かみ》さんと一緒に、時々そこらを取り片着けて歩いた。そしてまた新しく酒や食べ物を持ち運んだ。
夜が更《ふ》けてから、母親は昼間しかけておいた、お庄の襦袢《じゅばん》などを、茶の間の隅の方で、また縫いにかかった。
「私はそれじゃ、御免|蒙《こうむ》って少し横にならしておもらい申しますわね。」
叔母の母親は、ひとしきり仏の前へ行って来ると、脹《は》れ爛《ただ》れたような目縁《まぶち》を赤くして、茶の室《ま》の方へ入って来た。そして母親と一緒に茶を飲んだり、煮物を摘《つま》んだりしていた。
「さあさあ明日もあるもんだて、一ト休みお休みなすって……。」と、母親も眠い目をしながら、四畳半の方から掻
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