じめた。
四十九
「田舎の人は真実《ほんとう》に物が解らない。」と、お庄はまだ叔母の母親に言われたことが、頭脳《あたま》にあった。
お庄は手伝いに来ている安公のところの、お留という十四、五の娘にいいつけて買わした、乾物や野菜ものをそこへ拡げながら、お通夜《つや》の人に出す食べ物の支度に取りかかろうとしていた。母親のお安も仕事の手を休めて、そこへ来て見ていた。お庄は蓮《はす》の白煮を拵《こしら》えるつもりで皮を剥《む》きはじめた。傍には笹《ささ》ばかり残った食べ荒しの鮨《すし》の皿や空《から》になった丼《どんぶり》のようなものが投《ほう》り出されてあった。
奥ではもう湯灌もすんで、仏の前にはいろいろの物が形のごとく飾られ、香の匂いが台所までも通って来た。座敷の話し声が鎮《しず》まったと思うと、時々|鈴《りん》の音などが聞えて来た。
「お婆さんたちは何にもしないで、病人の傍にめそめそ泣いてればいいと思って。それは病人だって、大切にしなけれアならないけれど、そのために看護婦がつけてあるんじゃないか。病院だって、叔母さんだけが患者じゃないんだわ、お婆さんは真実《ほんとう》に勝手
前へ
次へ
全273ページ中153ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
徳田 秋声 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング