そんなものには太過ぎたし、手もしなやかに動く方ではなかったので、自分でも気がはずまなかった。
「わたし叔母さん駄目よ。」と、お庄は叔母が三味線を取り出すと、次の室《ま》へ逃げて行った。叔母は田舎風の節廻しで、独りで謳っていた。
 叔母はお庄の欲しがるような大きな人形を買って来て、それに好みの衣裳《いしょう》を縫って着せなどした。向うの子供を呼び込んで、玩具《おもちゃ》を買って懐《なつ》かしたり芝居の真似をさしておかしがったりしていたが、厭味なほどませたその子供は、お庄に馴染《なじ》んで、夜も一緒に抱かれて寝た。お庄は子供を負《おぶ》って日に幾度となく自分の家と向うの家とを往復した。
 金毘羅《こんぴら》で講元をしていた大きな無尽の掛け金を持って、お庄は取り縋《すが》るこの子供を負《おぶ》いながら、夕方から出かけて行った。ここから金毘羅まではかなりの道程《みちのり》であった。お庄は鉄道馬車で行けるところまで乗って、それからえッちらおッちら歩いて行った。その晩は銀座の地蔵の縁日であった。お庄は帰りにそっちへ廻って、人込みのなかを子供を負ったり歩かせたりして彷徨《ぶらつ》いていた。土の臭《に
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