つじ》の角に立ち停って四下《あたり》を見廻した。
何だか、もと奉公していた家《うち》がなつかしいような気がした。始終|拭《ふ》き掃除《そうじ》をしていた部屋部屋のちんまり[#「ちんまり」に傍点]した様子や、手がけた台所の模様が、目に浮んだ。どこかに中国訛《ちゅうごくなま》りのある、優しい夫人の声や目が憶い出された。出る時、赤子であった男の子も、もう大きくなったろうと思うと、その成人ぶりも見たくなった。
お作は柳町まで来て、最中《もなか》の折を一つ買った。そうしてそれを風呂敷に包んで一端《いっぱし》何か酬《むく》いられたような心持で、元気よく行《ある》き出した。
西片町|界隈《かいわい》は、古いお馴染《なじ》みの町である。この区域の空気は一体に明るいような気がする。お作は※[#「木+要」、第4水準2−15−13、43−下段−3]《かなめ》の垣根際《かきねぎわ》を行《ある》いている幼稚園の生徒の姿にも、一種のなつかしさを覚えた。ここの桜の散るころの、やるせないような思いも、胸に湧《わ》いて来た。
家は松木といって、通りを少し左へ入ったところである。門からじきに格子戸で、庭には低い立
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