り仕切って、永い間の手練《てなれ》の世帯向きのように気が利いた。新吉の目から見ると、することが少し蓮葉《はすは》で、派手のように思われた。けれど働きぶりが活《い》き活きしている。箒《ほうき》一ツ持っても、心持いいほど綺麗に掃いてくれる。始終薄暗かったランプがいつも皎々《こうこう》と明るく点《とも》されて、長火鉢も鼠不入《ねずみいらず》も、テラテラ光っている。不器用なお作が拵《こしら》えてくれた三度三度のゴツゴツした煮つけや、薄い汁物《つゆもの》は、小器用なお国の手で拵えられた東京風のお菜《かず》と代って、膳の上にはうまい新香《しんこ》を欠かしたことがなかった。押入れを開けて見ても、台所へ出て見ても、痒《かゆ》いところへ手が届くように、整理が行き届いている。

     二十一

 新吉は何だかむず痒いような気がした。どこか気味悪いようにも思った。
「そんなにキチキチされちゃかえって困るな。」と顔を顰《しか》めて言う。「商売が商売だから、どうせそう綺麗事に行きゃしない。」
「でも心持が悪いじゃありませんか。」と、お国は遠慮して手を着けなかったお作の針函《はりばこ》や行李《こうり》や、ほど
前へ 次へ
全97ページ中51ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
徳田 秋声 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング