っていることが解《わか》ったが、温まろうと思い、しばらくじっとしているうちに、身内がぞくぞくして来た。
 今朝体の懈いのはそのせいだったが、それを言えば、
「私のせいじゃないよ。お前が悪いんじゃないか。」
 と逆捩《さかね》じを喰《く》うにきまっていた。
 この風呂敷の問屋は、芸者に関係者はなかったが、商談などの座敷に呼ばれ、お神が出入りの芝居者から押しつけられる大量の切符を、よく捌《さば》いてくれた。歌舞伎《かぶき》全盛の時代で、銀子たちも、帝劇、新富、市村と、月に二つや三つは必ず見ることになっており、若林も切符を押しつけられ、藤川や春よしのお神にもたかられた。お神は裏木戸の瀬川に余分の祝儀《しゅうぎ》をはずみ、棧敷《さじき》の好いところを都合させて、好い心持そうに反《そ》り返っているのだったが、銀子もここへ来てから、ようやく新聞や画報で見ていた歌舞伎役者の顔や芸風を覚え、お馴染《なじみ》の水天宮館で見つけた活動の洋画から、ついに日本の古典趣味の匂いを嗅《か》ぐのであった。よく若林と自動車で浅草へ乗り出し、電気館の洋物、土屋という弁士で人気を呼んでいるオペラ館の新派悲劇、けれん[#「
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