後も三四度現われたが、銀子に若林のついていることが、薄々耳に入ったものらしく、次第に足が遠退《とおの》き、ふっつり音信が絶えてしまったが、藤川のお神が間に立って、月々の小遣《こづかい》や、移り替え時の面倒を見てくれている、ペトロンはペトロンとして、銀子も明ければもう二十歳で、花柳気分もようやく身に染《し》み、旦那《だんな》格の若林では何か充《み》たされないものを感じ、自由な遊び友達のほしい時もあった。そしてそういう相手が、ちょうど身近にあるのであった。
時々帳場の調べに来てくれて、抱えたちを相手にトランプを遊んだり、芝居や芸道の話をしてくれたり、真面目《まじめ》な株式の事務員としてどこか頼もしそうな風格の伊沢がそれで、その兄は被服廠《ひふくしょう》に近いところに、貴金属品の店をもっており、三十に近い彼はその二階で、気楽な独身生活をつづけ、たまには株も買ったりして、懐《ふところ》の温かい時は、春よしの子供を呼んで、歌沢や常磐津《ときわず》の咽喉《のど》を聞かせたりもした。坊主の娘だという一番|年嵩《としかさ》の、顔は恐《こわ》いが新内は名取で、歌沢と常磐津も自慢の福太郎が、そういう時き
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