われてようやく東京へ帰り、春よしの開業とともに、一人の母親と弟を見るために、そこから出ることになったものだったが、銀子はすでにI―町で顔が合っており、商売上のことについて、何かと言い聞かされもした。
お神は披露目に出るに先だち、銀子に茄子《なす》を刻んだ翡翠《ひすい》の時計の下げ物を貸してくれたのだったが、銀子はそっちこっち車を降りたり乗ったりして、出先を廻っているうちに、どこで落としたか亡くしてしまい、多分それが相当高価の代物《しろもの》であったらしく、お神はいつもそれを言い出しては銀子の粗匆《そそう》を咎《とが》めるのだった。しかし春次に言わせると、お神の勘定高いにはほとほと呆《あき》れることばかりで、銀子を見に行った時も、春次はお神に誘われ、松島見物でもするつもりで出かけたのだったが、帰って来ると、往復の汽車賃や弁当代までを割勘にし、毛抜きで抜くように取り立てられたのであった。
「それもいいけれどさ、一人じゃ汽車の長旅は退屈だから、ぜひ一緒に行ってくれと言っておきながら、一日分の遠出の玉まで取ったのには、私もつくづく感心してしまったよ。」
三
しかしこの芸者屋
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