しかし新橋や柳橋に左褄《ひだりづま》を取るものが、皆が皆まで玉の輿《こし》に乗るものとは限らず、今は世のなかの秩序も調《ととの》って来たので、二号として顕要の人に囲われるか、料亭《りょうてい》や待合の、主婦として、悪くすると逆様《さかさま》に金権者流から高利を搾《しぼ》られるくらいが落ちで、ずっと下積みになると、行き詰まれば借金の多いところから、保護法のない海外へ出るよりほかなく、肉を刻まれ骨を舐《しゃ》ぶられても訴えるところがなく、生きて還《かえ》るのは珍らしい方とされた。
 今この民子も玉の輿に乗り損《そこ》ねた一人で、彼女の放浪生活もそれから始まったわけだった。

      二

 彼女は華車《きゃしゃ》づくりで上背《うわぜい》もあり、後ろ姿のすっきりした女だったが、目が細く鼻も小さい割に口の大きい、あまり均齊《きんせい》の取れない長面《ながおもて》で、感じの好い方ではなく、芸もいくらか下地はあったが、もちろん俄仕込《にわかじこ》みで、粒揃《つぶぞろ》いの新橋では座敷の栄《は》えるはずもなく、借金が殖《ふ》える一方なので、河岸《かし》をかえて北海道へと飛び、函館《はこだて》から
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