で体を縛られ、いやなお客の機嫌《きげん》も取って、月々家へ仕送りもしているのよ。」
 銀子は倉持に言われ、退院後のこの夏二月ばかり仕送りを滞らせたところ、父親がさっそくやって来て、結局旅費や土産《みやげ》なぞに余分な金を使ったのが落ちであった。父は大洋の新鮮な鰹《かつお》や気仙沼の餅々《もちもち》した烏賊《いか》に舌鼓をうち、たらふく御馳走《ごちそう》になって帰って行ったのだったが、ここで食べた鰹の味はいつまでも忘れることができないであろう。
 医院が院長の隠居仕事なので、看護婦の体も閑《ひま》で、彼女の部屋はだだっぴろい家族の住居《すまい》から離れたところにあり、銀子が買って往《ゆ》くケーキなどを摘《つ》まんで本の話や身のうえ話をするのだったが、銀子の汚《よご》れものなぞも洗ってくれた。大河《おおかわ》まで持ち出して行って[#底本では「行つて」と誤植、423−下6]、バケツで水を汲《く》みあげるのが面倒くさく、じかに流れで濯《すす》いだりして、襦袢《じゅばん》や浴衣《ゆかた》を流したりしていた銀子も、それを重宝がりお礼に金を余分に包んだり、半衿や袖口《そでぐち》などを買ってやったりし
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