てもらっていることなどは、叭《おくび》にも出さなかった。
 やがて妹たちもめいめいの立場から、姉の身のうえを恥じ、学校でも勤め先でも、秘し隠しに隠さなくてはならないであろう。
 銀子は胸に滞っている当面の問題については、何にも話ができず、責任がまた一つ殖《ふ》えでもしたような感じで、母のお喋《しゃ》べりにまかれて家を出た。
 藤本へ還《かえ》ったのは、もう日の暮方近くで、芸者衆はようやく玄関わきの六畳で、鏡の前に肌ぬぎになりお化粧《つくり》をしていた。彼女たちの気分も近頃目立ってだらけていた。銀子のことを、そっちこっち吹聴《ふいちょう》して歩いたり、こそこそ朋輩《ほうばい》を突ついたり、銀子の手に余るので、どうせ一度は抱えの入替えもしなければと、親爺《おやじ》も言っているのだった。
 親爺は十畳で酒を呑んでいた。
「お前どこへ行ってた。」
「家へ行ったんだわ。」
「行くなら行くと言って行けばいい。お前お父さんに何か話しだろ。」
「別に何にも。」
「もっとこっちへおいで。」
 銀子は廊下の処《ところ》に跪《しゃが》んでいたが、内へ入って坐った。
「それじゃ何しに行ったんだ。」
「お父さん
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