「この子お父さん似だわ。」
「誰に似たか知らないけれど、この子は目が変だよ。ほかの子は一人もこんな目じゃなかったよ、みんな赤ん坊の時から蒼々《あおあお》した大きい目だったよ。この子の目だけは何だか雲がかかったようではっきりしないよ。おら何だか人間でないような気がするよ。」
「そうかしら。こんなうちは判んないわよ。」
 外は少し風が出て、硝子戸ががたがたした。するうち小さい妹が前後して、学校から帰って来た。みんなで下で煎餅を食べながら、お茶を呑《の》んだ。
「お銀姉ちゃん泊まって行くの。泊まって行くといいな。」
 大きい方が言った。
「泊まってなんか行くもんかよ。風が出たから早く帰んなきゃ。」
 母は帰りを促し気味であった。

      十四

 銀子は蟇口《がまぐち》から銀貨を出して妹に渡し、
「これお小遣《こづか》い、お分けなさい。」
 そう言って帰りかけたが、父は額に濡手拭《ぬれてぬぐい》を当て臥《ね》そべっており、母はくどくどと近所の噂《うわさ》をしはじめ、またしばらく腰を卸していた。父は仕事ができないし、怪我《けが》をしなくても、元来春先になると、頭が摺鉢《すりばち》をかぶっ
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