《かけだ》しの作家|跣足《はだし》だぜ。」
 同僚のあるものは蔭《かげ》で言っていたが、それも盲目の銀子に栗栖の価値を知らせるためだったが、銀子は一般の芸者並みに客として見る場合、男性はやはり一つの異性的存在で、細かい差別は分からなかったが、四街道《よつかいどう》、習志野《ならしの》、下志津《しもしづ》などから来る若い将校や、たまには商用で東京から来る商人、または官庁の役人などと違って、こうした科学者には、何か芸者に対する感じにも繊細なところがある代りに、気むずかしさもあるように思えた。それに栗栖の態度には、どうかすると銀子を教育するような心持があり、何だと思うこともあった。
 暮はひどくあわただしかった。マダムが病院から死骸《なきがら》で帰り、葬式《とむらい》を出すのとほとんど同時に、前からそんな気配のあった浜龍が、ちょうど大森へ移転する芸者屋の看板を買って、披露目《ひろめ》をすることになり、家《うち》がげっそり寂しくなってしまった。
 銀子も暮から春へかけて、感冒にかかり扁桃腺《へんとうせん》を脹《は》らして寝たり起きたりしていたが、親爺《おやじ》の親切な介抱にも彼女の憎悪は募り、
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