で立って行った。
それア鄭重なもんですぜ。私ア恁《こ》う恁うしたもので、これこれで出向いて来ましたって云うことを話すと、直に夫々掛りの人に通じて、忰の死骸の据ってるところへ案内される。死骸はもう棺のなかへ収まって、花も備えてあれば、盛物もしてある。ちゃんと番人までつけて、線香を絶やさないようにしてある。
そこで上官の方にもお目にかかって、忰の死んだ始末も会得の行くように詳しくお話し下すったんですよ。その時お目にかかって、弔みを云って下さったのが、先ず連隊長、大隊長、中隊長、小隊長と、こう皆さんが夫々叮嚀な御挨拶をなすって下さる。それで×××の△△連隊から河までが十八町、そこから河向一里のあいだのお見送りが、隊の規則になっておるんでござえんして、士官さんが十八人おつき下さる。これが本葬で、香奠は孰《どっち》にしても公に下るのが十五円と、恁《こう》云う規則なんでござえんして……
それで、『大瀬、お前は晴二郎の死骸を、此まま引取って行くか、それとも此方で本葬をして骨にして持って行くか、孰《いずれ》でも其方の都合にするが可い』と、まあ恁う仰って下さるんで……。そこで私は、この晴二郎には、
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