方《そっぽ》むいているじゃありませんか。私は心が暗くなって、幾度となく台所へ出て涙を拭《ふ》き拭きしていたのでした。私たち母子《おやこ》は先生のところのお茶|貰《もら》いになぞなりたくはありません。」
葉子は途切れ途切れに言って、激情に体を戦《おのの》かせていた。庸三は驚き傍《そば》へ寄って、宥《なだ》めの言葉をかけたが、効《かい》がなかった。起きあがったと見ると、次の間で箪笥《たんす》の前に立って何かがたがたやっていたが、そのまま瑠美子を引っ張って、旋風のごとく玄関へ飛び出した。
少し狼狽《ろうばい》して、庸三は出て見たが、「二度と己《おれ》の家の閾《しきい》を跨《また》ぐな」と尖《とが》った声を浴びせかけて、ぴしゃりと障子を締め切った。
やがて学校を退《ひ》けて来た咲子が、部屋から部屋を捜しあるいた果てに、父の書斎へ来て寂しそうに立っていた。庸三は何かせいせいした感じでもあったが、寂しさが次第に胸に這《は》いひろがって来た。彼女の憤りを爆発させた今朝の態度の不覚を悔いてもいた。
「おばちゃんは?」
「おばちゃんは出て行った。」
「瑠美子ちゃんも?」
「そう。」
「もう帰ってこ
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