ようで、いくらか心外な感じがしなくもなかった。しかしそれも、後になって考えてみると、清川と師匠の関係は、切れたようで真実は切れきりではなかったのかも知れないのであった。切れるために、庸三の金がいくらか役に立ったのではなかったか。瑠美子の恩師へのせめてもの償いとしても、葉子と清川とがそれだけの物資を提供したであろうことも、庸三の感じに映ったあの時の事象の辻褄《つじつま》を合わせるのに、まるきり不必要な揣摩《しま》でもなかった。しかしそれも時たってから、庸三の興味的にでっちあげた筋書で、事件の直後にはなんの影も差さなかった。
「えらいんだな、もう稽古なんか初めて。」
 庸三が言うと、彼女は嫣然《にっこり》して、
「え、今日から初めましたの。心持の整理もつきましたからね。それに負け惜しみじゃないけれど、真実《ほんとう》を言うと、この方がさっぱりしていいのよ。」
 そして三十分ほど話して、庸三は師匠の家を出たのだったが、銀座で食料品の店頭に、ふと支那服の彼女を見つけた時には、少女のように朗らかであった。庸三は小夜子と庸太郎を紹介して、四人歩きながらしばらく話してから別れたのだったが、それが契機
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