》しそうに笑っていた。
「母さんどうしたの。」
庸三は傍《そば》へ寄って来る瑠美子にきいてみた。瑠美子は悪怯《わるび》れてもいなかった。
「あのね、ママは今日ね、私と一緒に銀ぶらに行ったの。だけどママはほかへまわることになったの。それで北山さんに電話をかけて私を連れに来てもらったの。」
何のことだか解《わか》らなかった。北山や史朗にきいてみるのも無駄であった。庸三は煙草をふかしながら、しばらく横になって目を瞑《つぶ》っていたが、太々《ふてぶて》しくも思えて、やがてそこを出て来た。
葉子によって庸三に紹介された年少詩人のこの場合の立場の不利であったのはもちろんだが、しかし去就に迷うほどのことでもなかった。彼はそのころ、庸三に接近しているある大新聞の学芸欄記者に拾われて、その下に働いたことがあり、ほんの二三カ月だったが、とにかくジャアナリストとしての一役を当てがわれて、すっかり朗らかになっていたこともあった。やっと少し喫茶代や煙草賃に有りついたと思うと、印刷職工から相手にされず、主任も手を焼いて止させてしまったが、その代り文壇の先輩にいくらか知られるようになり、有名な大森の詩人に近
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