もこの道には長《た》けたはずの雪枝のことなので、いくら葉子の情熱でも瑠美子との師弟の情誼《じょうぎ》を乗り超《こ》えてまで、恋愛には進まないであろうし、若いマルキストの清川が、やすやすそれを受け容《い》れもしないであろう。その理由はもちろん薄弱であった。何の防禦《ぼうぎょ》にもならないことも解《わか》りきっていたが、庸三はわざとその問題には顔を背向《そむ》けようとしていた。
そのころ葉子は美容師メイ・ハルミから持って来た、アメリカの流行雑誌のなかから、自分に似合いそうなスタイルを択《えら》んでいたが、一つ気に入ったのがあったので、特に庸三に強請《ねだ》って裂地《きれじ》や釦《ボタン》などをも買い、裁断に取りかかっていた。別に洋裁を教わってはいないのだったが、とにかく裁《た》った。裂はオレンジ色のサティンだったが、全部細かい襞《ひだ》から成り立ったスカアトに、特徴があると言えるのであった。葉子は清川に着てみせるのを楽しみに、縫っているのだったが、庸三はそんなこととも知らずに、その型にも地の色にも首を傾けながらも、けちをつける隙《すき》もなくて、黙って見ていた。
その時葉子は、庸三の家
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