か面白いことがあったのよ。汽車の中で女学校時代のお友達に逢《あ》ったの。市の大きな呉服屋の娘さんですけど、銀行なんか持っている多額納税者の小河内《おごうち》さんとこへ片着いて、市でも評判なのよ。その小河内さんも一緒だったものだから紹介されたけれど、この人は三田の経済部出で麹町《こうじまち》辺に家をもっているらしいの。一度遊びに来いとか言っていたっけが、洋服でもネクタイでも靴でも、それこそ五分の隙《すき》もないシックな気取り方で、顔もきりっとした、あれが苦味走ったとでもいうんでしょうよ、ちょっと現代風のいい男なの。ああいう人はまたいい葉巻を吸ってるものなのね。ケイスを出して、私にも一本くれたけれど――。」
葉子の話のなかに、そこに通俗小説の主人公が一人浮かび出して来た。
「奥さんも、顔は少々二の町だけれど、派手な訪問着なんか着て、この人はただ人柄がいいというだけのものなの。小説や映画のことも私などと話のピントが合わないんだもの。あの旦《だん》つくにしては少し退屈な奥さんかも知れないけれど、感じは大変いいの。」
「そんなのいいね。何とかならないものかね。」
「だって奥さんがあるんですもの
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