の車を尾《つ》ける番だった。
二十二
世間的にも私生活的にももはや収拾のつかなくなった二人の立場を、擬装的にでも落ち着かせようとして、二人のあいだに結婚|談《ばなし》の持ちあがったのもまたそのころのことであった。そんな心持は庸三が最初葉子の田舎《いなか》へ招かれた時にも、彼女の母たちにはあった。そして庸三の出方一つで母方の叔父《おじ》が話しを決めに来るはずであった。しかし庸三の気持はそこまで進んでいないのであった。今庸三がその気になったのは、長いあいだの痴情の惰性で、利害を判別する理性の目が曇ったからでもあったが、恋愛の惨《みじ》めな頽勢《たいせい》を多少なりとも世間的に持ち直そうとする愚かな虚栄と意地からであった。
「先生が亡くなっても、私がさっそく困らないように心配していただけるのでしたら、叔父も賛成してくれますわ。」
葉子は言うのだったが、庸三も三つの書店から来る印税の一番小額な分の残額くらいは、それに当てておいてもいいと思った。
そのころ葉子は子供が海岸に行っている間を、庸三の古い六畳の方を居間にして、プルウストやコレットの翻訳などを読み耽《ふ》けり、その
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