かけて、庸三の意嚮《いこう》を確かめてからやって来たのであった。
「もし先生がお差支《さしつか》えないようでしたら。」
「そうですね。今ならお話ししてもいいかと思うんですけど。」
 葉村氏の姿を玄関口に見ると、帳場で小夜子と話していた庸三は、立ち上がって自身案内した。モダアンな葉村氏の質問はデリケートであったが、古い感覚の庸三は、大人《おとな》ぶった子供っぽいものでしかなかった。
「どうでしょう、今度の事件は巧く行くでしょうか。先生のお見透《みとお》しは?」
「そうですね。僕にもわからないんですが、巧く行くようにと思っています。今度は本物かも知れませんよ。」
「そうですか。僕は葉子さんが、あの断髪にした時に、あの人の心の動きというか、機微というか、何かそういうものを感じましたよ。」
 そんな話がしばらく続いた。
「お書きになるんだったら、この話が巧く進行するように書いて下さい。葉子は世間が言うほど悪い女でもないんですよ。もちろん打算もあるし、野心的なところもありますが、大体が最初の結婚の出発点が悪いんで、あんなふうに運命が狂って来ているんです。文学的才能だって、伸ばせば伸びるはずなんで
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