も目が留まらなかったし、何か仄《ほの》かに引っかかるもののある感じのする売色《くろうと》にも、その場きりの軽い興味をもち得る機会が、長いあいだにはたまにあったとしても、女を愛する資格があるとは思っていなかったので、自然恋愛を頭から否定してかかっていたのだったが、今葉子との恋愛が破綻《はたん》百出の状態におかれてみると、何か意地の汚い目がとかく世間の女性へと注がれがちであった。
 彼は小夜子につれられて、おけいさんというこの女の人の家《うち》へも一度遊びに行ってみた。おけいさんは三田《みた》の方の、ある静かなところに門のある家を借りていた。十六七の姪《めい》が一人|田舎《いなか》から出て来ていて、二階には三田の学生が二人ばかり下宿していた。古風な中庭には泉水などがあって、躑躅《つつじ》が這《は》いひろがり、楓《かえで》の若葉がこんもりした陰影を作っていた。四畳半の床の間には、白い平鉢《ひらばち》に、こってりした生花がしてあって、軸や雲板《うんばん》もそうひどいものではなかった。おけいさんにはお茶の心得もあるらしかった。物綺麗《ものぎれい》でこぢんまりしたところは、妾宅《しょうたく》のよう
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