かなり離れた場所で、骨董品《こっとうひん》を並べていた。手のもげかかった仏像、傷ものの陶磁器、エキゾチックな水甕《みずがめ》や花瓶《かびん》、刀剣や鍔《つば》や更紗《さらさ》の珍らしい裂《きれ》なども集めていた。芸術家同志の恋愛で、かつて三年ばかり結婚生活を営んでいた妻の女流作家と別れて、今の妻と同棲《どうせい》してからかなりの月日がたっていたが、どうかすると思わぬ時に、その作品を新聞の上に見ることもあった。新しい恋人を追って、アメリカへ渡って行った、その女流作家の消息も、すでに絶えがちであった。
 彼はいつでも恋愛讃美者であったが、いつか庸三は小さい娘の咲子や瑠美子をつれて、葉子と一緒に上野辺を散歩している時に、ふとしばらくぶりで彼に出会ったのであったが、今彼はその時の葉子の印象を、彼流に率直に話すのだった。しばらく町なかの下宿に隠しておいた、純白な一少女との自身の恋愛告白に、しばし庸三も耳を傾けたが、その後で一緒に病室を見舞うことになった。
「あの時広小路で僕はふとあの人の姿が、目についたんだ。身装《みなり》もじみだしちっとも修飾しちゃいないんだけれど、何か仄《ほの》かに匂ってくる
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