いて、隣の三階の窓から見下ろされる場所に、突き出して建てた、床のやや高めになった六畳の新しい自分の部屋に机をすえていると、台湾|檜《ひのき》の木の匂いなどもして、何か垢《あか》じみた古い衣をぬぎすてて、物は悪くてもとにかく新しいものを身につけたような感じで、ここはやはりこれからの清浄な仕事場として、葉子に足を踏み入れさせないことにしようと、彼は思ったほどであった。
葉子はある時は、ほぼ形の出来かかった建築を見に来て、機嫌《きげん》の好いときは、二階の子供の書斎の窓などについて、自身の経験と趣味から割り出した意見を述べ、子供たちと一緒になって、例の愛嬌《あいきょう》たっぷりの駄々っ子のような調子で、日本風の硝子《ガラス》の引戸の窓に、洋風の窓枠《まどわく》を組み込んで開き窓に改めさせなどしたこともあったが、しかし子供たちのための庸三の家のこの増築は、彼女にとってはあまり愉快なものではなかった。
「いいもんだな先生んとこは、家が立派になって。」
葉子は笑談《じょうだん》のように羨望《せんぼう》の口吻《こうふん》を洩《も》らすこともあったが、大枚の生活費を秋本に貢《みつ》がせながら、愛だ
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