、使いつけの女中のような親しさで、ただ新聞記者でも来ていはしないかと、隣室の気勢《けはい》に気を配るだけであった。
しかし刺戟《しげき》のつよい湯は彼女にとって逆効果を現わした。三日ばかり湯に浸ってはガアゼの詰めかえをやっているうちに、痛みがだんだん募って来るばかりで、どうかすると昼間でも床を延べさせて横になるのであった。昨日まで時々やって来る少しばかりの苦痛を我慢して、大倉公園へ遊びに入って、色づいた木々のあいだを縫って段々を上ったり、岩組みの白い流れのほとりへ降りてみたり、萩《はぎ》や鶏頭の乱れ咲いている花畑の小径《こみち》を歩いたり、または町の奥にある不動滝まで歩いて、そこからまた水のしたたる岩壁の裾《すそ》をめぐって、晴れた秋の空に焚火《たきび》の煙の靡《なび》く、浅い山の姿を懐かしんだりしていた彼女は、飛んでもないところへ連れて来られでもしたように、眉《まゆ》のあいだに皺《しわ》を寄せて、すっかり機嫌《きげん》がわるくなってしまった。そしてそうなると、庸三も何か悪いことでもしたようで、ひそかに弱い心臓を痛めるのであった。潤《うる》んだ目をして、じっと黙りこくっているとか、ま
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