きた子供よりも死んだ子供の魂に触れる感じの方が痛かった。それに比べれば、二十五年の結婚生活において、妻の愛は割合|酬《むく》いられていると言ってよかった。
 翌日になって、三時ごろに二人打ち連れて医師がやって来た。彼らはさも気易《きやす》そうな態度で、折鞄《おりかばん》に詰めて来た消毒器やメスやピンセットを縁側に敷いた防水布の上にちかちか並べた。夏もすでに末枯《うらが》れかけたころで、ここは取分け陽《ひ》の光にいつも翳《かげ》があった。その光のなかで荒療治が行なわれた。
 庸三はドクトルの指図《さしず》で、葉子の脇腹《わきばら》を膝《ひざ》でしかと押えつける一方、両手に力をこめて、腿《もも》を締めつけるようにしていたが、メスが腫物を刳《えぐ》りはじめると、葉子は鋭い悲鳴をあげて飛びあがろうとした。
「痛た、痛た、痛た。」
 瞬間|脂汗《あぶらあせ》が額や鼻ににじみ出た。メスをもった婦人科のドクトルは驚いて、ちょっと手をひいた。――今度は内科の院長が、薔薇色《ばらいろ》の肉のなかへメスを入れた。葉子は息も絶えそうに呻吟《うめ》いていたが、面《おもて》を背向《そむ》けていた庸三が身をひいた
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