おもや》の方へ出て行くこともあって、しばらく帰って来ないのであったが、帰って来たときの素振りには別に変わったところもなかった。
「私を信用できないなんて、先生もよくよく不幸な人ね。」
 葉子は言うのだったが、それかと言って、場所が場所だけに、争闘はいつも内攻的で、高い声を出して口論するということもなかった。
 やがてその痔が急激に腫れあがって、膿《うみ》をもって来たのであった。
 庸三は傍《そば》に寝そべっているのにも気がさして、蚊帳を出ようとすると、彼女は夢現《ゆめうつつ》のように熱に浮かされながら、
「もうちょっと居て……。」
 と引き止めるのであった。
 朝になると、彼女も少し落ち着いていて、狭い露路庭から通って来る涼風に、手や足やを嬲《なぶ》らせながら、うつらうつらと眠っているのだったが、それもちょっとの間の疲れ休めで、彼女がある懇意な婦人科のK氏に診《み》てもらいに行ったのは、まだ俥《くるま》でそろそろ行ける時分で、痛みも今ほど跳《と》びあがるほどではなかったし、熱も大したことはなかった。それがてっきり痔瘻だとわかったのは、その診察の結果であったが、今のうち冷し薬で腫れを散ら
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