かに茶の間へ出て行って見た。葉子は姐御《あねご》のようなふうをして、炉側《ろばた》に片膝《かたひざ》を立てて坐っていたが、
「お前なんぞ松川さんが愛していると思ったら、飛んだ間違いだぞ。おれ今だって取ろうと思えばいつでも取ってみせる。」
という言葉が彼の耳についた。
するうち嵐《あらし》が凪《な》いで、書生はその辺を飛びまわっている男の子の機嫌《きげん》を取るし、色の浅黒い、目の少しぎょろりとした継母は匆々《そうそう》にお辞儀をして出て行って、葉子は子供のふざけているのに顔を崩しながら、書生たちにもお愛相よくふるまっていた。やがて書生たちも、烏賊《いか》の刺身や丸ごと盆に盛った蟹《かに》などを肴《さかな》にビールを二三杯も呑《の》んで、引き揚げていった。
その晩、庸三が煩《うるさ》く虫の集まって来る電燈の下で、東京の新聞に送る短かいものを書いていると、その時から葉子は発熱して、茶の間の仏壇のある方から出入りのできる、店の横にある往来向きの部屋で床に就《つ》いてしまった。触ると額も手も火のように熱かった。顔も赤くほてって、目も充血していた。
「苦しい?」
「とても。熱が二度もあるの
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