たらいいだろうって、私に五百円おいて行ったものなの。」
「それが君のペトロンなの。」
「ペトロンなんかないけど。」
「一体君いくつなの?」
「私ですか。そうね。」彼女の答えは曖昧《あいまい》であった。彼に女の年を聞く資格もなかった。
「その男は?」
「それきりですの。」
「金は。」
「金は使っちゃいましたわ。」
 それが一夜の彼女の貞操の代償というわけであった。彼女は今でもそれを千円くらいに踏んでいるものらしかった。
「その男は――株屋?」
「株屋じゃありません。株屋ならちょっと大きい人の世話に、この土地で出ていた時分にはなったこともありましたけれど、その人も震災ですっかりやられてしまいましたわ。」
 そして彼女はその株屋の身のうえを話し出した。
「その人がまだお店の番頭時代――二十四くらいでしたろうか、ある時お座敷に呼ばれて、ちょっといいなあと思ったものです。たびたび逢《あ》っているうちに深くなって、店をわけてもらったら、一緒になろうなんて言っていたものでしたが、ほかにお客ができたものですから、それはそれきりになって、私も間もなく堅気になったものですから、ふつり忘れてしまっていたもん
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