とうは私自費出版にしたいと思うんですけれど、そのお金ができそうもないものですから。」
「そうね、僕も心配はしてみるけれど……。」
庸三は暗然とした気持で、彼女の生活を思いやるだけであった。
「先生も大変ですね。お子さまが多くて……。梢さんどうなさいましたの。」
「葉子は今田舎にいますけど……。」
「私のようなものでよかったら、お子さんのお世話してあげたいと思いますけれど。」
「貴女《あなた》がね。それは有難いですが……。事によるとお願いするかも知れません。」
「ええいつでも……。」
彼女は机の上にひろげた詩稿を纏《まと》めて帰って行った。
彼はその日のうちに葉子に手紙を書いた。その詩を讃《ほ》めると同時に、子供の世話を頼もうかと思っている云々《うんぬん》と。すると三日目に葉子から返事がとどいて、長々しい手紙で、少しいきり立った文句で、それに反対の意見を書いて来た。でなくとも、女給をして来た人では、庸三の家政はどうかという意見もほかの人から出たので、彼もそれは思い止《とど》まることにした。
庸三は風呂《ふろ》で汗を流してから、いつもの風通しのいい小間で、小夜子とその話をしていた。
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