あるのかい。」
「あすこは聖天《しょうでん》さまが祀《まつ》ってあるんですの。あらたかな神さまですわ。舟で行くといいんですけれど。」
お昼ちかくになってから、不断着のままの小夜子と同乗して、庸三もお山の下まで附き合った。そしてタキシイのなかでお山の段々から彼女の降りて来るのを待っていたが、それからも彼は二三度お詣りのお伴《とも》をして、ある時は段々をあがって、香煙の立ち昇っている御堂近くまで行ってみたこともあった。
ある日も庸三はこの水辺の家へタキシイを乗りつけた。
彼は三日目くらいには田舎《いなか》にいる葉子に手紙を書いた。書いたまま出さないのもあったが、大抵は投函《とうかん》した。もう幾本葉子の手許《てもと》にあるかなぞと彼は計算してみた。いずれいつかはそっくり取り返してしまうつもりであったし――またほとんど一本も残らずある機会に巧く言いくるめて取りあげてしまったのであったが、そんな予想をもちながらも、やはり書かないわけに行かなかった。今まで気もつかなかった、変に捻《ねじ》けた自我がそこに発見された。葉子を脅《おど》かすようなことも時には熱情的に書きかねないのであった。葉子
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