の双方が互いに上がったり下がったりしていた。
 それに庸三は暮に師匠と清川の訪問を受け、何か思いがけないお歳暮まで貰《もら》っていた。ちょうど葉子も来ている時で、その贈物が二人を祝福するようにも取れたが、少し感潜《かんぐ》って考えると、すでに庸三から離れてしまっている、このごろの葉子の気持を汲《く》んでか、事によると今一歩進んで、師匠の斡旋《あっせん》によって、庸三の怒りを買うことなしに、穏和な解決を得ようとする手段の一つのようにも取れないこともなかった。もちろんその時の庸三に、そこまで見透《みとお》しのつくはずもなかったし、朗らかな師匠の談話や態度にも、そんな影は少しも差していなかったが、清川の態度には暗示的なものがないとは言えなかった。彼の若さと正直さは、この老作家の前にいい加減なお座なりは言ってはいられなかった。
「もう少し何とか巧く行きそうなものだと思いますがね。」
 清川は歯痒《はがゆ》そうに言うのであった。さながら清川自身だったら、もっと彼女を幸福にすることも、巧くリイドすることもできるはずだと言っているようであった。もしも庸三にもっと鋭敏な神経が働くか、理論的な頭脳があったら、多少挑戦的にも看《み》らるる清川の言葉に躊躇《ちゅうちょ》なく応酬したに違いないのであった。すると清川はあるいは進んで、破綻《はたん》百出のこの不自然な恋愛の不合理を説き、庸三自身のためにも、葉子のためにも、彼女を解放することを力説したかもしれず、事によるとあるいはすでに納得ずくの師匠もそれに助勢して、清川と葉子との恋愛を彼女の口から代弁告白することに、プログラムがちゃんと出来あがっていなかったとも限らないのであった。その場合、師匠が一歩先きに、自ら二人の恋愛を承認していなければならないのは、もちろんであった。
 しかし庸三は、その晩の彼らの真意を、そこまで深く探究する余裕はなかった。彼はただ嵐《あらし》の前の木の葉の戦《そよ》ぎを感じ、重苦しいその場の雰囲気のなかに、徒《いたず》らに清川と葉子との気持を模索するにすぎないのだった。
 やがて四人打ち揃《そろ》って外へ出てみたのであったが、葉子は部屋にいたときと同じく、始終物思わしげに、俛《うつむ》きがちに歩いており、清川の靴の音だけが、すでに春の装いもできた晦日《みそか》ぢかくの静かな町に、ぽかぽかと響くのであった。
 間もなく
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