少し何とかいふ子がありさうなものだ。籍はちよつと見合したら何うかね。後で迷感のかゝるやうなことがあると困りやしないか。」
 蓮見も別に咲子が好きとか嫌ひとかいふのではなかつた。母の子で育てれば好い子になるかも知れないが、ならないかも知れない。好いとか悪いとかいふことも色々で、単純にはいへない。抱へのうちに顔や姿は綺麗だが、物事を単純に考へがちな圭子がじれつたがるほど不決断で、お座敷の取做《とりな》しなどについて、何か言つて聞かせても、いつも俛《うつむ》いて何時までも黙つてゐる子が一人あるのに、かね/″\業《ごふ》を煮やしてゐた矢先きなので、咲子のてきぱきしたのが、直ぐ気に入つてしまつた。この子だつたら余り何かに世話を焼かせるやうなことはあるまいと思つた。圭子は一直線に進むやうな質《たち》の女で、そのために後で悔いるやうなことが出来ても、それに拘《こだ》はつてゐるのが嫌ひだつた。金を使ひすぎたとか、着物を買ひ損《そこな》つたといふやうな事があつても、何時までもそれを気にするやうなことはなかつた。
「でも世のなかにそんな好い子供がざらにある訳のものぢやないでせう。それだつたら貴方探して来て
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