頃自分の手に買取ったその山のある一部の森林を見廻っているとき、雨《あま》あがりの桟道《そばみち》にかけてある橋の板を踏すべらして、崖《がけ》へ転《ころが》り陥《お》ちて怪我《けが》をしてから、病院へ担《かつ》ぎこまれて、間もなく死んでしまったと云うのであった。
 お島はそれを聴いたとき、あの男が、そんな不幸な死方をしたとは、信じられなかったが、その死の日や刻限までを聴知ってから、次第にその確実さが感じられて来た。
「すれば、あの人の霊《たましい》が、私をここへ引寄せたのかもしれない」
 お島はそうも考えながら、次第に深い失望と哀愁のなかへ心が浸されて行くのを感じた。
 浜屋へついたのは、日の暮方であった。以前よく往来《ゆきき》をしたステーションの広場には、新しい家などが建っているのが二三目についたが、俥《くるま》のうえから見る大通りは、どこもかしこも変りはなかった。雨がはれあがって、しめっぽい六月の空の下に、高原地の古い町が、澱《おど》んだような静さと寂しさとで、彼女の曇《うる》んだ目に映った。
 お島はその夜《よ》一夜《ひとよ》は、むかし自分の拭掃除《ふきそうじ》などをした浜屋の二階
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