に近い或小駅で、お島は乗込んで来る三四人の新しい乗客が、自分の向側へ来て坐るのを見た。
それらの人は、どこかこの近辺の温泉場へでも遊びに行って来たものらしく、汽車が動きだしてからも、手々《てんで》にそんな話に耽《ふけ》っていた。山の町の人達の噂《うわさ》も、彼等の口に上《のぼ》ったが、浜屋々々と云う辞《ことば》が、一層お島の耳についた。汽車の窓から、首をのばして彼等の見ている山の形が、ふと浜屋の記憶を彼等に喚起《よびおこ》したのであった。その山は、そこから二三里の先の灰色の水霧のなかに幽《かす》かな姿を見せていた。
「あなた方《がた》はS――町の方のようですが、浜屋さんがどうかしましたのですか」
お島は、断々《きれぎれ》に耳につくその話に、ふと不安を感じながら訊いた。
「私《わたくし》は東京から、あの人に少し用事があって来たものですが、お話の様子では、あの人があの山のなかで何か災難にでも逢ったと云うのでしょうか」
遊女屋の主人か、芸者町の顔利《かおきき》かと云うような、それらの人たちは、みんなお島の方へその目を注いだ。
金歯などをぎらぎらさせたその中の一人の話によると、浜屋は近
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