などに関する閲歴が、彼女の心を蕩《とろ》かすような不思議な力をもっていた。
蓄音器に、レコードを取かえながら、薄ら眠い目をしている小野田の傍をはなれて、お島はその男と、そんな話に耽《ふけ》った。
百十
小野田が田舎へ立ってから間もなく、急に浜屋に逢う必要を感じて来たお島が、その男に後を頼んで、上野から山へ旅立ったのは、初夏《はつなつ》のある日の朝であった。
病院で躯《からだ》の療治をしてからのお島は、先天的に欠陥のない自分の肉体に確信が出来たと同時に、今まで小野田から受けていた圧迫の償いをどこかに求めたい願いが、彼女の頭脳《あたま》に色々の好奇な期待と慾望とを湧かさしめた。いつからか朧《おぼろ》げに抱《いだ》いていた生理的精神的不満が、若いその職人のエロチックな話などから、一層誘発されずにはいなかった。
そしてそれを考えるときに、彼女はその対象として、浜屋を心に描いた。
「あの人に一度逢って来よう。そして自分の疑いを質《ただ》そう」
お島はそれを思いたつと、一日も早くその男の傍へ行って見たかった。
一つはそれを避けるために田舎へ帰った小野田がいなくなってからも
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